…ここからが本題の超実数の話。先程、我々は実数体Rに∞と-∞を追加した集合である拡大実数を得た。 注意深い読者なら気付いただろうが、この集合は拡大実数「体」ではない。つまり、これは体ではない。 我々はまず自然数全体の集合Nから始め、Nが元々持っていた構造(足し算や掛け算、大小関係)を壊さないように慎重に拡張してきたのだが、 Rに∞と-∞を追加したことでその構造が壊れてしまったのである。 拡大実数を構成する際、 「限りなく大きくなる」代数的数の列は「∞に限りなく近づく」代数的数の列 だという拡大解釈を行ったが、 これが失敗だった 。 「限りなく大きくなる」代数的数の列として挙げた{1,2,3,4,…}と{2,4,6,8…}は確かに両方とも「限りなく大きくなる」代数的数の列であることは間違いない。 しかし{1,2,3,4…}という列に比べ{2,4,6,8…}という列は2倍の勢いで大きくなっていく。 この事実を無視し、単純に両方を∞という同じ数に近づく列だと考えてしまったのが原因でおかしなことになってしまったのである。 この問題を解消するには、「異なる勢いで大きくなる列」には「異なる∞」を対応させればよい。 この方法を用いれば、Rの体構造を保ったまま∞と-∞を追加することができる。これを超実数「体」と呼ぶ。